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ペルーの金鉱労働者と違法採掘 

ロゴ https://stories.swissinfo.ch/gold-peru-switzerland-mining-metalor-japanese

序章

金の違法採掘が横行するペルーでは、アマゾン熱帯雨林の荒廃が進み、むき出しの大地には水銀汚染が広がる。スイスの貴金属精錬大手メタローは、ペルーの仕入れ先が違法採掘された金を扱っていたこと受け、南米の小規模鉱山からの輸入を全面的にストップした。


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だが法の規制が緩いこれらの国の鉱業界では不正が絶えない。ここ10年近く、最高値を更新し続ける金価格もまた、違法採掘に拍車をかけている。

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上空から見るかぎり、ペルーの大洋間高速道路は道のどちら側も同じ風景だ。荒れ地が広がり、濁った水があちこちにたまっている。さえない土地だが、戦略的にはとても重要な意味を持つ。この道はペルー南東部マドレ・デ・ディオス県へつながる主要な輸送動脈。そこでは今、一攫千金を狙う人々による金採掘がエスカレートしている。

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このアマゾン熱帯雨林で生計を立てる何千人もの鉱山労働者にとって、この高速道路は法を守る人とそうでない人との境界線でもある。ペルー当局は、タンボパタ国立保護区とその緩衝地帯を道路の片側のエリアだけ鉱夫の立ち入り禁止区域に指定した。そして道路の反対側には、一定の条件を満たせば金の採掘が許される「採鉱回廊」が広がる。
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しかし法の規制が緩い地域がほとんどで、状況は大洋間高速道路のルートや政府が言っているほど明確ではない。採鉱規制も名ばかりで、違法採掘が無秩序に広がりをみせた結果、大規模な森林伐採と水銀汚染を生んだと専門家は指摘する。
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監査機関によると、その金の一部がスイスに流れ込んでいるという。そしてスイスの精錬業者や宝石商、時計職人がこういった「汚い金」を調達していると指摘する。そのツケが回ってくる日も近いかもしれない。世界の金精錬産業をリードするスイスでは現在、人権侵害と環境汚染に関わった企業に対する罰則の強化を求める議論が交わされている。

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しかし、「汚れた」金の判別は一筋縄ではいかない。swissinfo.chがペルーの鉱夫やトレーダー、法執行機関から得た情報によると、犯罪組織や違法採掘者は金の出所を隠ぺいするために、合法的に入手した金と混ぜてから国際的な金市場に持ち込むという。そのためスイスの精錬業者や金輸入会社は、輸入した金が合法的なのか判別が難しくなる。


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中には判別することを諦めた企業もある。スイスの貴金属精錬大手のメタローは2019年初頭、南米の小規模鉱山との金取引を全面的にストップした。同社の取引先だったペルー輸出業者ミネラレス・デル・スールの金の延べ棒91キロが税関当局に押収されたことを受けての決定だった。ペルー当局によると、マドレ・デ・ディオスの違法な金が混入していた疑いが持たれている。



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当局は長い間、この地域の鉱山で働く何千人もの違法採掘者との勝ち目のない戦いを続けてきた。マドレ・デ・ディオスのタンボパタにあるシンクタンク、アマゾン科学イノベーションセンターの推定では、過去30年間で香港とほぼ同じ面積にあたる960平方キロメートルの森林が金採掘のために伐採された。軍が定期的に違法採掘の拠点を爆破しているが、すぐまた別の場所で採掘が始まるだけだという。


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しかし、当局は諦めなかった。ペルー軍は先ごろ、大洋間高速道路沿いの採鉱禁止区域「ラ・パンパ」で「マーキュリー作戦」を開始。違法採掘者を追放すべく、小国に匹敵する広さの地域を占領した。また同時に、環境・社会基準を満たす金鉱労働者を正式に認定する制度を推進した。


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合法的な道を探して

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鉱夫のフアン・タミーニャさんはこれまで30年近く、プキリ川周辺で採鉱を行ってきた。アンデス地域のクスコ出身のタミーニャさんは、より良い生活を求めて両親と一緒にペルーのアマゾン熱帯雨林に移り住んだ。

「必要に迫られ、前進するために何年もここで働いてきた」とタミーニャさんは言う。「自分自身、そして子供たちのためにより良い生活を求めて」

長い間、金の採掘と取引はジャングルの奥深く、政府の監視がほとんどない無法地帯で行われてきた。しかしこの状況は次第に変わりつつある。精錬業者や消費者が金のサプライチェーンの透明化や、持続可能な採鉱を求めるようになってきたためだ。


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採鉱が許可されている土地は、広さ約50万ヘクタール(サッカー場100万個分)の広大な採鉱回廊にある。但し、環境・社会基準を満たしていることが金採掘の条件だ。


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タミーニャさんは、政府の公式認定制度に応募した。この資格をもらえれば、仕事が法的に認められたという証になる。8月中旬の時点で4500人の鉱夫が申請したが、認定を受けたのはわずか117人だった。タミーニャさんも近いうちに彼らの仲間入りできればと願っている。



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認定を受けるためには、伐採された地域の再植林を行い、採鉱に水銀を使用していないと証明する必要がある。タミーニャさんはそのため、水銀を使わずに金を土から分離できる専用設備を取り入れた。

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また、労働法を守り税金を支払う必要がある。タミーニャさんの説明によると、販売が許されるのは指定のトレーダー1社のみだ。このトレーダーはかつてメタローに金を直接販売していた共同事業体の一部で、正式なインボイスを発行する唯一の企業でもある。

しかし、これらの規則も違法取引は抑制できないとタミーニャさんは言う。そして鉱夫の間では周知の事実だが、ライセンスを持ったトレーダーでさえ供給元が不明な金を購入していると指摘した。また、そういったトレーダーは、タンボパタ国立保護区の周辺にある「ラ・パンパ」と呼ばれる地域以外にも存在するのだ。

「トラブルがないように」国の要求を考慮しながら「全ての条件を満たした」と言いうタミーニャさんは、公式認定に申し込んだことを証明する政府発行のカードをポケットから取り出した。今後は、この1枚のプラスチックカードが警察の手入れからタミーニャさんを守る唯一の盾となる。



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1989年、タミーニャさんはマドレ・デ・ディオスにあるプキリ川沿いの鉱山にやってきた。2009~10年のリーマン・ショックで金価格が高騰し、一攫千金を夢見る違法採掘者が「デルタ・ウノ(Delta1)」と呼ばれるこの地域に押し寄せるずっと前のことだ。

彼の努力は報われた。当初は鉱石を洗い流すための手押し車と水力駆動の単純な機械を数台しか持ち合わせなかったタミーニャさん一家だが、今では22人の従業員を抱える。タミーニャさんが採鉱を許されている1平方キロメートルの「区画」では、従業員が現代的な掘削機とトラックを複数駆使して作業を行う。

「生産量には波がある。今日は多いかもしれないし、少ないかもしれない」とタミーニャさん。その傍らで、従業員2人がちょうどシフトを終えて移動してきた。立坑2カ所で8時間、金をすすぐ過酷な作業だ。従業員は皆、現場に建てられたレンガ造りの平屋で寝泊まりする。







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各シフトで立坑1カ所につき平均32グラムの金が抽出できる。2カ所合わせて得られる金1グラム当たりの価格を120ソル(約3840円)とすると、1日の稼ぎは1万5千ソル(約48万円)になる。

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一見多く感じるかもしれないが、純利益は1日当たり500ソル(約1万6千円)程度のこともある。必要経費がかさむのだとタミーニャさんは言う。ウォーターポンプと採鉱機にはどうしてもガソリンが必要だ。また、子供たちが学校に通えるよう、最寄りの都市クスコに暮らす妻と3人の子供の生活費もいる。家族に会えるのは2カ月おきに10日だけだ。

タミーニャさんは、今後10~15年は現在の区画を引き続き採鉱するが、その後は「別の場所に移動する」予定だという。

ペルーの鉱業法の改正で、自分のような中小規模鉱山の鉱夫でも、外国の大規模な採鉱業者と対等に渡り合えるようになればとタミーニャさんは期待する。また、持続可能な採鉱を実現するためには、国の支援が必要だと考える。そしてマーキュリー作戦で頻繁に行われるようになった、警察と軍隊による手入れや営業妨害から解放されることがタミーニャさんの願いだ。

タミーニャさんは、国が公式な認定制度を促進したことは評価するが、マーキュリー作戦には否定的だ。そして自分のように法律を守ろうと努める金鉱労働者がいるにも関わらず、マドレ・デ・ディオスの鉱夫は誰もが違法に働いているという誤った認識を植え付けたと批判する。



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闇市場

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元金鉱労働者のウォルター・バッカさんは、今では鉱山機械のレンタル業を営む。彼の一族は違法採掘の罪に問われ、メタローと金銭にまつわる不正行為があったと報じられている。

ウエペトゥエで会ったバッカさんは、この告発についてのコメントは避けたものの、金取引に関する見識と自らの経験を話すことについては前向きだった。

「悪いのは金のバイヤー」とバッカさんは指摘する。「人々が違法に働き続けるのは、(バイヤー)何らかの借りがあるためです」


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バッカさんは地元で有名なグレゴリア・カサスとセシリオ・バッカ夫妻の甥にあたる。夫妻はワイペトゥエの露天掘り金鉱山の最初の開拓者に数えられ、地元の時事通信社オホ・パブリコによると、鉱区を18カ所持ち、長年にわたる違法採掘とマネーロンダリングの犯罪捜査を受けていた。





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同通信社はまた、匿名のペルー税関当局による嫌疑に関連して、メタローがバッカさんの叔母やいとこを含むバッカ一族所有の銀行口座に送金したと報じている。一方、カサス・バッカ一族は、不正行為を繰り返し否定。一族の中には、これは告発者が政治的に優位に立つため、あるいは金銭を得るための策略だと主張する者もいた。

バッカさんは、親族が告発されたことについて直接のコメントは避けたが、汚職と脱税に手を染める地元トレーダーは多いと指摘。そしてトレーダーが価格を調整し、インボイスを発行しないことで市場を操作していると非難する。金鉱労働者は、単にトレーダーに何等かの借りがある囚われの身に過ぎないという。


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「金がリマに集結すると、トレーダーは金を一つにまとめて販売します」と言うバッカさんは、メタローもこのような金を仕入れたことがあると主張した。

マドレ・デ・ディオスの主要な金の仕入先が癒着関係にあることや、トレーダーが買い集めた金を一つにまとめて販売していると知った上での輸入だったのか―。メタローに問い合わせたところ、「この地域から資源は輸入していない」との回答だった。

また同社の広報担当者はswissinfo.chに対し、メタローがペルーの公式認定制度に「非常に貢献し」、金のトレーサビリティに関する懸念をペルー当局に伝えたと説明。そして「これまでにさまざまなペルー当局から得た反応すべてが、その懸念を払しょくするものだった」と電子メールで回答した。

ただし、「規制と法執行の枠組みが不安定であることが判明し、失望している」とも付け加えた。





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メタローがペルーからの金輸入をストップした今、今後のビジネスが心配かとバッカさんに尋ねると、「ここには常に金の買い手がいるので、生産側はあまり気にしていません」という答えが返ってきた。

バッカさんは、マーキュリー作戦以前の政府の干渉がなかった頃は、採鉱が野放しの状態だったと言う。金の価格が上昇すると、多くの人が重機に投資して熱帯雨林の奥深くまで掘り下げ、水銀で水路や下層土を汚染していった。ペルーは2018年に水銀汚染の防止を目指す国際条約を批准したが、インターネットを通じ、有毒性重金属は依然として国内で広く販売されている。



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バッカさんは、かつての政府高官が、犯罪組織に有利となる金取引の片棒を担いでいたと非難する。そして政府は小規模鉱山に構うより、むしろ金のバイヤーをめぐる汚職に優先して取り組むべきだと考える。

「政府の推奨する公式認定制度には、明確なゴールがありません」とバッカさんは言う。「まるで奈落の底に向かっているようです」

以前はバッカさんも金鉱労働者として働いていた。だが6年前、違法採掘の取り締まりが厳しくなり始めた頃にペルー軍が採鉱機器を爆破してしまったため、他のビジネスに転身した。新しいビジネスでは、「公式認定制度に申し込んだ鉱夫」、すなわち合法的に採鉱しようと考えている人を対象に機器のリースを行っている。




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マーキュリー作戦に巻き込まれた金鉱労働者の多くは、バッカさんのように採鉱分野で新しい道を見つけた。地元住民はそう話す。だが中にはタンボパタ国立保護区に近い熱帯雨林の奥深くにまで移動した人や、大洋間高速道路を越えて採掘回廊に入り、法律すれすれで利益を追い続けている人もいる。

マーキュリー作戦を知った金鉱労働者のほとんどは、採鉱禁止区域であるラ・パンパから逃げ出したが、それでも200人以上が逮捕された。同時に数億円相当の機器が押収され、破壊された。

バッカさんは、ワイペトゥエでの経験を振り返って言う。「人々は追われながら働いています。政府が施設を爆撃して機器を押収すると、金鉱労働者はかえって狂ったように働くため、この戦略は逆効果です」


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バッカさんの高級な邸宅からは、うらぶれた鉱山街が見渡せる。この街には法の網を巧みにすり抜ける金のバイヤーや、若い女性が働く薄暗いバーやナイトクラブがあふれる。法執行機関によると、ここで働く女性は家事手伝いやウェイトレスとしての働き口があるとそそのかされ、貧しい山岳地帯から出稼ぎにやって来た女性がほとんどだという。

ペルー国家警察の環境局長を務めるルイス・ヴェラ将軍はリマでのインタビューで、違法採掘が行われている区域に潜入した際にこういった場所を多数見かけたと答えた。

「事態を取り締まる公的機関がなかったため、虐待と失踪事件が多数発生していた」とヴェラ将軍は言う。「全てを掌握していたのは、違法な採鉱現場を所有する監督者や資本家だ」

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住民の話では、採鉱が禁止されているエリア周辺では、金鉱労働者は逮捕されないように夜間に作業を行うという。夜が明け作業を終えると、帰路に就く前に、森の湿地の上に木の板を敷き、その上をバイクで走る。キャンプへの痕跡を残さないためだ。

「時々、遠くでエンジンの音が聞こえますよ」と道路沿いの宿を経営するドリスさんは言う。自分のフルネームは伏せた。

「あそこでは金がたくさん取れるの。良い日には、靴底を1000個作れるくらいね(約3万3千円)」

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違法採掘は今も後を絶たないが、マーキュリー作戦は、ラ・パンパの環境破壊が著しい地域での違法採掘を大幅に遅らせることに成功したとの見解だ。

アンデス・アマゾン熱帯雨林のモニタリングプロジェクト(MAAP)によると、マーキュリー作戦が始まった2018~19年前半にかけて、金採掘のための森林伐採は92%減少し、900ヘクタールから67ヘクタールへ縮小したという。


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マーキュリー作戦の司令官を務めるルイス・ギレン・ポロ大佐は、彼の部隊が違法採掘者だけでなく、金の違法バイヤーとトレーダーも積極的に取り締まっていると説明する。

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虚偽、隠ぺい、環境汚染

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しかし、ペルー政府が「汚い」金を根絶するためには、違法採掘者を暴力的に取り締まるだけでは不十分だ。州検察による数々の犯罪捜査や地元メディアの調査からも、トレーダーによる金のトレーサビリティが未だに不透明なことは明らかだ。ペルーの金の買い取り企業と地元の代理店や関係者の間では、不正なインボイスが蔓延している。そのため、根絶には会計の専門家も欠かせない。

家族関係や取引先との複雑なネットワークが隠れ蓑となり、この地域で活動する多くの企業間のつながりは不透明だ。外国の精錬業者や商社への輸出業者として、中小規模のバイヤーがほとんど関税記録に残っていないのはそのためだ。そして実際に記載のあったバイヤーの多くは、マドレ・デ・ディオスの違法採掘地区との関わりがあったことが分かっている。

我々が取材した違法採掘者十数人のほとんどが、主にペルーの商社A&Mメタルトレーディングとヴェタ・デ・オロ社に金を販売していると話した。


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我々はこれらの事実関係について個別の調査を行うため、該当する企業や他の会社の現地事務所を訪問しようと試みたが、取材はことごとく拒否された。ある時は、強面の警備員に「質問する権限などない」と追い返されたこともあった。

またペルー南東部の首都プエルト・マルドナドにあるヴェタ・デ・オロ社の2階建てのオフィスでは、コメントを求める我々に対し、これ以上調査を行わないよう従業員がストップをかけてきた。そして同社が金の買い取りに携わっていることを否定し、この建物はホテルであると主張した。だが外に掲げられた大きな看板を見れば、この建物の所有者が旅行業者ではなく、金を取り扱うトレーダーであることは明らかだ。

同じくプエルト・マルドナドにあるA&Mメタルトレーディングのオフィスでは、従業員が会社の弁護士に電話をかけ、我々の質問に回答するのを拒否した上、即刻立ち去るよう求めてきた。


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さらに、ワイペトゥエ所在のE&Mカンパニーの店長は、カウンターの後ろに掲示してある本社の電話番号を示唆したが、我々が実際に電話を掛けると、その番号はどれも繋がらなかった。ヴェタ・デ・オロ社とA&Mメタルトレーディングでは、アクティヴォス・ミネロス社に直接問い合わせるよう促された。この会社は、違法採掘で知られる地域のバイヤーにライセンスを与えることを政府により認可された民間企業だ。しかし、リマに拠点を置くこの会社に宛てたメール6通と度重なる電話は、全て未回答に終わった。

直接コンタクトは取れなかったが、同社の活動は監視機関や活動家には周知の事実のようだ。「アクティヴォス・ミネロス社は、監視役として国からの支払いを受けているが、実際は監視を行っていない」と語るのは、クリストフ・ヴィードマー氏だ。ペルーにおける金輸入を研究し、スイスに拠点を置く擁護団体「危険にさらされた人々を守る会(STP)」の共同会長を務める。

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金トレーダーも環境汚染の一因だ。簡易炉で金の鉱石と水銀を燃やし、金を抽出する時に、有毒な水銀蒸気を大気中に放出する。我々が訪れた金の取引営業所の多くでは、通りからこういった炉が見受けられた。そしてある営業所では、炉の写真を撮ろうとすると従業員からの脅しさえ受けた。

米国マーサー大学のアダム・キーファー教授(化学)によると、そのような店の周りの空気中の水銀レベルはペルーの規定値の1000倍、そして米国政府の定めた最小リスクレベルの1万倍も高いという。教授はペルー政府と協力し、この地域の大気汚染を調査している。


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(汚染が最も深刻とされる紫と赤色の部分は、簡易炉が使われている場所と一致する)
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スイスとのつながり

こうして「汚い金」は違法採掘者から不透明なバイヤーのネットワークを通じ、外国の商社や精錬業者に販売される。



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スイスとの関わりが出てくるのはここだ。メタローを含む世界最大級の精錬業者がいくつも存在する欧州は、世界中のほとんどの金が一度は通過する地点だ。ペルーはスイスへの金輸出国で6位にランクインしている。
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金はスイスで精錬された後、世界中に輸出される。主な輸出先は中国とインドだ。スイスの貴金属と宝石の輸出額は、時計の3倍以上にのぼる。





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マドレ・デ・ディオスの名が大きく紙面を飾ったのは2018年。前出の「危険にさらされた人々を守る会」が、同地域の違法な金がメタローに輸出されたという調査結果を公表した。

STPは、マドレ・デ・ディオスからの金が、ミネラレス・デル・スール社を通じメタローに販売されたと主張。この地域で行われる鉱業活動は、政府の主導や弾圧にも関わらず、未だに大半が違法とされる。

ミネラレス・デル・スール社が販売を許されているのは、プーノ南東部からの金のみだ。しかし同社の所有者は、マドレ・デ・ディオスの先住民アマラカエリ族の保護区に近いワイペトゥエに土地を持つ。

メタローは告発を否定し、金はプーノ由来だと主張。一方、STPはペルーのエネルギー・鉱業省のデータを元に、メタローがミネラレス・デル・スール社から輸入した金は、プーノ地区の総生産量を超えていたと指摘した。



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違法な金に関するメタローの疑惑は引き続き調査中だが、メタローは、ペルーでは起訴されていないと主張している。また同社は先ごろ、「法に準拠するリソースの欠如」を理由に、ペルーからの金の輸入をストップすると決定。南米の小規模鉱山やトレーダーとの取引を全面的に停止した。

だが、この決定が状況の改善につながるわけではないようだ。マドレ・デ・ディオスのルイス・イダルゴ知事はswissinfo.chに対し、メタローのペルー撤退は、違法採掘の抑止をかえって困難にするだろうと述べた。

そして「(輸入を全面的にストップするのではなく)合法的に採鉱している人から金を購入して欲しい」と言う。「スイス企業の役割は、金鉱労働者には高価すぎて手が出ない(クリーン)テクノロジーへのアクセスを可能にし、金をより簡単に販売できるようにすることだ」(イダルゴ知事)


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例えば金鉱労働者のフアン・タミーニャさんのように、金を分離する振動台といった「クリーン」な金採掘技術を使えば、水銀を使わなくて済む。

ゴールドロンダリングに関する著書を執筆したバーゼル大学のマーク・ピエト教授(刑事法)は、責任を持って金を生産するために、スイスの精錬業者は小規模の非公式鉱山と協力すべきだと言う。またピエト教授は、それによる会社へのデメリットはほとんどなく、金の流通経路を追跡する適切で透明性のある監査に必要なコストも、メタローやスイス精錬企業全体にしてみれば「ポケットマネー程度」でしかないとswissinfo.chに語った。

スイス政府も同じ見解のようだ。連邦経済省経済管轄局(SECO)のペルー支部代表、マーティン・ペーター氏は、「資源へのアクセスを長期的に可能にするためにも、持続可能性に関心を持つことは企業のメリットになる」と言う。


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ペルーの状況を改善するためには、政府機関、鉱夫、地方自治体、NGOなどの関係者が一丸となって努力する必要があるとメタローは強調する。「しかし現時点では、そこから程遠いのが現状です」と同社の広報担当官はswissinfo.chに回答した。

ペルーとスイスの活動家や権利擁護者らは、消費者からの圧力が高まれば、最終的には違法採掘を抑制できるかもしれないと言う。

スイスの市民社会団体は、既に長年も前から「汚い金」の輸入はスイスのイメージを傷つける恐れがあると主張してきた。

この動きはイニシアチブ(国民発議)へと発展し、政府は行動せざるを得なくなった。スイスでは間もなく、スイス企業が外国で行う活動による人権侵害や環境被害に対する法的責任を企業に問うことができるようにする「責任ある企業イニシアチブ」をめぐる国民投票が行われる。しかし結果がどう出るかは全く不透明だ。


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制作 

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文:Paula Dupraz-Dobias

写真:Sebastian Castañeda & Paula Dupraz-Dobias & SDA-Keystone

グラフィック:Kai Reusser & Alexandra Kohler

ビデオ:Sebastian Castañeda & Paula Dupraz-Dobias

プロダクション:Dominique Soguel

翻訳:シュミット一恵
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付記:メタローとのやりとり全文

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ミネラレス・デル・スール社や他企業とメタローへの輸出に関するペルー当局の調査は、現時点でどこまで進んでいますか?
メタロー:我々の知る限り、ペルー当局によるミネラレス・デル・スール社の調査は現在も続いています。しかしメタローはこれに関し全く起訴されていないため、それ以上の詳細は分かりません。


2018年に91キロの金が押収された後、ペルー検察官からメタローに連絡がありましたか?
メタロー: ミネラレス・デル・スール社との商業関係に関する情報を提供するよう求められたため、これに関し必要な文書(契約書、インボイス、銀行振込の証明等)を全て期限内に提供しました。


ミネラレス・デル・スール社は金の供給元を知りながら輸出したと考えていますか?
メタロー: 貨物に関連する文書には、金の供給元である鉱山の区域など、必要な情報は全て記載されていました。これらの情報が間違っていると疑う理由はありませんが、その正当性の保証もありません。調査で事実関係が判明するでしょう。


ペルー政府は、ラ・パンパの違法採掘者を取り締まると同時に、マドレ・デ・ディオスの金鉱労働者の公式認定制度を導入し、環境・社会基準に準拠するよう推進しています。これはメタローがペルーからの輸入再開を検討する理由になりますか?
メタロー: 確かに、そのような声明は歓迎しますが、実際に持続可能な行動が伴わなければ意味がありません。メタローはマドレ・デ・ディオスからの資源は一切、取り扱わない上、少なくとも近い将来はこの状況が変わるとは思いません。小規模鉱山に関しては選択肢を検討することもできますが、そのためには全ての関係者(政府機関、金鉱労働者、地方自治体、NGO)が一丸となって協力する必要があります。しかし現時点では、そこから程遠いのが現状です。ペルーの大規模な採鉱業者に関しては、引き続き取引を行っています。


メタローはペルーからの金輸入を停止するのではなく、金鉱労働者の公式認定制度や、水銀汚染を回避できる採鉱技術を獲得できるよう鉱夫らを支援するべきだとマドレ・デ・ディオスの知事は発言しています。こういった批判に対し、メタローはどう対応していますか?
メタロー: メタローは、公式認定制度のサポートに大きく貢献しています。これは鉱夫が金に対して公正な価格を得るための最良の方法であり、環境を汚染しない採掘方法を採用するなど、全体的な労働条件の改善にもつながります。しかしメタローが単独でその責任を負うことはできません。そのためには、前述のように全ての関係者が協力して努力する必要があります。


取引先の金の供給源についてどの程度ご存じですか?金の由来について、メタローの情報源はどの程度透明ですか?
メタロー: 上記の、全ての出荷に伴う書類についての応答を参照して下さい。

ある企業の金生産量が、その区域で物理的に可能な採掘量よりも多い場合、そういった企業とのビジネス関係を絶ったことはありますか?もしそうであれば、どの会社ですか?
メタロー: そのような状況を避けるために、取引先の生産量を定期的に監視しています。事実、法令順守のためビジネスをストップしたこともあります。メタローは企業理念において決して妥協しません。


メタローはこれまでに、金の供給源や、金取引をめぐる緩い法規制についての懸念をペルー当局に伝えたことはありますか?
メタロー: はい、公式認定制度に着手した時点と、それ以降も定期的に懸念を伝えています。ペルーの様々な関連当局(鉱業の担当大臣、アクティヴォス・ミネロス、公式認定制度の実施局や税務管理局スナート)から得られた回答は、全て非常に心強いものでした。しかし規制と法執行の枠組みが不安定であることが判明し、失望しています。


マドレ・デ・ディオスの主要な金のバイヤーの癒着、そして彼らが買い集めた金を互いに取引・一括していることをご存じですか?
メタロー: いいえ。メタローはこの地域からの資源は一切扱っていません。

 



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